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牛乳
かねてから私の中で常に懸案だった牛乳。
牛乳あってのアイスなので、これだけは拘ってこだわりすぎると言うことはないはずです。
数年前の狂牛病の報道があって初めて肉骨粉を牛に与えるという恐ろしい事実を初めて知った私。
草食動物である牛に共食いを強要するようなことをする人間の傲慢さ、いったい誰が考え出したことなんだか知らないけれど、私からすると自然界に対する大いなる冒涜と挑戦としか言いようがありません。
何年間かお商売をしてきて、実は幾つかの牧場や乳業メーカーさんとお取引させていただきました。
最初は長野のとある牧場と提携をし、牧場直営という形をとることで日本には限られた数しか飼育されていないブラウンスイスという珍しい牛のお乳を格安で手に入れることが出来、また、牧場にも何度か足を運んだりしてどんな牛からお乳をもらっていアイスを作っているかを把握する状況にありました。
でも、これは本当に恵まれた環境でアイスを作っていたのだと、今になると思います。
直営という名前をもらったことで、考えられないような価格でブラウンスイスのお乳を買わせてもらっていたのですから。
でなきゃ、シングル¥350でなんて販売できません。
通常の仕入れ値でしたら¥500以下で販売は出来ないですね。
いくら美味しいアイスだったとしても、¥500のアイスを皆さんが食べに来てくれるとはこの不景気の中、なかなかないことだと思うのです。
しかし、その後この牧場は人手に渡ることに。
牧場主がこわぁ〜いお兄さんの女に手を出したとか出さないとかでその筋の人達から逃げ回るようなことになり、お仕事もしていられなくなって、その大切なブラウンスイスという牛は長野から松阪にある牧場に買ってもらうことに。
この辺の実際の詳しい事情は私が一時期お店を離れていた時のことなので、これ以上よくは判らないのですが、、、
その後、松阪からブラウンスイスのお乳をとっていたのですが、直営という看板も外れた以上、当然お乳の卸価格は上がりました。
しかも、ブラウンスイスは日本での飼育が難しいので数の増えない牛なので、長野から松阪へのお引っ越しは彼等にとって余り心地の良いものではなかったようです。
勿論、松阪の牧場を見ていないので、推測でしか言えないのですが、ブラウンスイスには松阪の気候が暑すぎたんだと思います。
それで、お乳の質も悪くなり、折角高価なブラウンスイスのお乳を使ってアイスクリームを作る意味がなくなってしまったのです。
牛さんの体調は大事です。
お乳の味にストレートにでます。
(と、私は思っています。)
ですので、実を言えば長野の牛も結構その時の牧場の状況を反映して味にばらつきはありました。
四季折々で味に変化があるのは当然です。
そうではなく、牧場を運営している人間の問題で味が変わってしまうのです。
あんなおっとりしているような生き物でも、ストレスは受けるんですよね。
そして、今度は断腸の思いでブラウンスイスのお乳を諦めて、筑波山麓の酪農共同組合業者さんからホルスタインのお乳を分けてもらうことを決めるのです。
でも、ここも、あの雪印の一件で業務提携やら何やらで会社として存続しなくなりある日突然、「いついつで工場を閉めることになりました。いついつからはそちらとお取引は今後出来なくなりました」と一方的に告げられてお終い。
「えっ、他の業者さんとかを紹介して下さいよ。一方的にお取引できませんといわれてもこちらも困ります」と言ったのですが、「はぁ〜」と言うだけ。
皆さんにはお伝えしませんでしたが、一時期はお店、存続出来ない?とまで思いました。
だって、お乳、手に入らないのですから。
って、牛乳なんてどこにでもあるじゃない?と思いますよね。
きっと。
そんな、存続出来るか出来ないかなんて大げさなことじゃなくってって。
でも、うちが使っていたのは、牛乳ではなく、生乳だったのです。
生乳を手に入れるのは牧場直営でない限り日本では、はっきり言って宝くじに当たるくらい難しく、大変なことです。
きっと、牧場の脇にある販売所以外で生乳でアイスを作っていたのはうちくらいだと思います。
ただ、私の持論として、お乳を何度も加熱殺菌したら美味しいものの美味しくなくなると思っています。
生乳からアイスを作る時には副材料と混ぜる際の殺菌の一回だけ。
68度30分殺菌の、低温殺菌です。
日本で認められている一番低い温度での殺菌です。
それ以上高い温度で殺菌するとタンパク質が焼けた味がして、お乳本来の旨味を感じられなくなると思っています。
牛乳からアイスを作る時には牛乳にする際に既に一回殺菌されていますから、副材料と混ぜる際にもう一度殺菌をかけますので、二回殺菌です。
安全性も大事です。
でも、美味しさも追求したかった私はずっと生乳に拘ってきました。
しかしついに、生乳で作ることを断念するときがきました。
茨城の乳業メーカーから期限を突きつけられた私は必死でお乳を探しました。
料理ジャーナリストのかたのツテで牧場を紹介していただいたり、手当たり次第電話をかけてみたり。
そんな時、たまたま友人が貸してくれたある雑誌に今お取引していただいているところの記事が載っていて、『ここかも知れない!牛乳で作るならここのお乳ならできるかも知れない』と。
すぐさま電話を掛けて、事情を説明しなんとかお取引願えないだろうかとかなり無理を言ったにもかかわらず、さんざんお願いをしてお受けいただいたという経緯があります。
本当に朝霧乳業さん、富士開拓農業組合さんにはお世話になりました。
(って、現在進行形ですけど。)
当店が使用しているのはこの朝霧乳業さんがつくる、酪農家限定の放牧牛乳。
搾乳期には非遺伝子組み換え作物の餌のみ。
安心かつ安全、しかも出来るだけ自然な形で飼育された牛であることが判ります。
牛の種類はホルスタインですけれども、、、
生乳から牛乳へ。
雪印の一件、さらに様々な食物の偽装問題以降の食に対する消費者の不安感を少しでも取り除くことが出来ればと考え、美味しさより、お客様への安全性を優先した結果です。
勿論、これからも更なる美味しいお乳を求め続けて行くつもりです。
そして、出来れば私が惚れ込んだブラウンスイスの生乳で再びアイスを作りたいと思っていますし、是非皆さんにも本当に美味しいアイスを召し上がっていただきたいと思います。
日本でそれを実現するためには私自身が牧場主になる他方法がないかもしれないなぁと半分夢のように思っています。
先日富士方面に行ったのはそういう事情だったからです。
秋には再訪し、きちんと牧場をみせてもらい搾乳もさせてさらに酪農や牛に対しての知識をさらにつけていきたいと思っています。
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